8月6日付の聯合ニュースに「20世紀初頭まで日本官報に朝鮮海表記」と題された記事が出た。東海研究会理事を務めるイ・サンテ韓国領土学会会長が、日本の官報を調べたところ、日本海を「朝鮮海」と表記しているものが発見されたという。
以下にイ・サンテ氏の主張を要約する。
①1894年から1902年に発行された日本の官報に、日本海のことを「朝鮮海」と表記したものが7件見つかった
②特に5616号(1902年3月28日)及び、5749号(同年9月1日)は「日本は朝鮮海を外国の領海とみなして、外国領海水産組合法を制定した。同法により日本漁民保護ため『朝鮮海水産組合』が設立された。」としており、1902年までの日本政府は公式な立場で、朝鮮海は日本海ではなく、外国領海であるとしている
③1905年の乙巳条約が締結されるまで、日本政府は公式に『朝鮮海』を使用し、日露戦争後に突然『日本海』を強調し始めた。すなわち1905年以前に『日本海』は存在しなかった。
結論から言ってこの主張は間違いである。細かい指摘は後述するが、各主張への反論を以下に述べる。
イ氏の主張への反論
①1894年から1902年に発行された7件の官報のいずれにも、朝鮮海が日本海の事を指すとは書かれておらず、官報の情報だけで「日本海=朝鮮海」と主張するのは乱暴すぎる。また官報にある「朝鮮海」は朝鮮半島沿岸の極限られた海域のみを指す(添付画像1枚目参照)。なぜ朝鮮海が朝鮮半島沿岸海域かは後述する。
②①で述べた通り官報の「朝鮮海」は「日本海」の意味ではなく、朝鮮半島沿岸海域についての呼称である。確かに日本政府は「朝鮮海」は外国の領海だとしているが、「日本海」を外国の領海だとは言っていない。
③今回イ氏が調査した7件の官報は朝鮮海について言及しているが、そもそも日本海には関係のない記事であり、「1905年以前に日本海は存在しない」という主張の証拠にはならない。
おそらくイ氏は官報の内容を読んでいないか、理解していない。日本語の史料である上に、漢字を使わなくなった韓国人が、漢字カナ交じり文の官報を読んで内容を理解することは困難だと思うが、東海研究会の理事で領土学会の会長でもある人物が、この程度の調査結果を発表してしまうのはお粗末に過ぎる。
明治期に官報における「朝鮮海」表記に関する考察
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