強制動員被害者たちは20年近い長い年月の間、韓国で日本の巨大企業を相手取って訴訟を続けた末、やっとの思いで最高裁(大法院)の勝訴判決を勝ち取った。
ところが、尹錫悦政権が乗り出して、加害者の責任を帳消しにしようとしている。最高裁の判決によると、何の責任もない韓国企業から寄付を募り、被害者に渡すという。もし被害者が受け取りを拒否するなら、供託をしてでも(賠償問題を)終わらせるという。被害国が加害者の責任を帳消しにするため、ここまで努力する理由は一体何なのか。それが自国民である被害者に対し、最小限の礼儀をわきまえた態度なのか。
日本企業の責任を韓国側が肩代わりするというのは、その責任を宣言した最高裁の判決を真っ向から否定することだ。行政府が介入しているのだから、行政権による司法権の否定であり、三権分立を規定した憲法に反することだ。さらに、最高裁の強制動員判決は日帝の朝鮮半島支配が不法な強制占領だったという判断の根拠を憲法前文の「3・1運動で建立された大韓民国臨時政府の法統」に求めているため、その判決を否定することはすなわち、大韓民国のアイデンティティを否定することに他ならない。
同時に、それは深刻な歴史の退行でもある。周知のように、朴正煕(パク・チョンヒ)政権が日本政府と締結した1965年韓日基本条約第2条は、「千九百十年八月二十二日以前に大韓帝国と大日本帝国の間で締結されたすべての条約及び協定は、もはや無効であることが確認される」と規定している。「もはや」という妥協的な修飾語のため、日本側に日帝の朝鮮半島支配が「合法」だったと主張する口実を与えたりもしたが、1905年乙巳勒約(第二次日韓協約)と1910年併合勒約(韓国併合条約)などが当初から無効だという大韓民国の公式立場を確認するものでもあった。
ところが日本政府は「合法的支配」という自らの前提から出発しており、強制動員というものを全く認められず、したがって最高裁の判決は誤りだと攻撃している。そのような日本政府の攻撃に全面的に屈服することは、1965年の水準以下に転落することに他ならない。その結果は、朴正煕政権よりも歴史的に最悪の政権以外の何物でもない。
http://japan.hani.co.kr/arti/opinion/45593.html
強制徴用「併存的債務引受」は中途半端な法律論であり、歴史的退行
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