米バイデン政権が国策に据えた環境保護の旗印の下、米国は官民を挙げて電気自動車(EV)シフトを加速させている。2021年8月6日付の米ニューヨーク・タイムズ紙は、「バイデン政権のEV計画は米テスラを助け、日本のトヨタを追い詰める」と題した記事を配信し、“日本車潰し”の進行を示唆。こうした中、米メディアや専門家は、EV開発で後れを取る日本を尻目に、欧州や中国こそが今後の米自動車産業のライバルになるとの予想図を描く。同時に、米国の計画が思惑通りに進まない可能性も指摘される。日本に逆転のチャンスはあるのか。
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また、そもそもの問題として、米国内の電力供給が石炭や石油由来からクリーンエネルギーに順調に移行しない限り、ハイブリッド車に対するEV総排出量の優位性は失われ、EV シフトの国策そのものが説得力を失う点が重要だ。そのクリーンエネルギー移行は、ひとえに政治動向次第である。
そのほかにも、バッテリー劣化による航続距離短縮の不安や、バッテリー材料のコバルト・リチウム・レアアース採掘にまつわる人権侵害や環境汚染(3月2日付のニューヨーク・タイムズ)など、「ゲームチェンジャー」と喧伝されるEVが乗り越えなければならない経済的・政治的・社会的な変数は複雑に絡み合っている。
このように、米自動車市場における完全EV化の未来はすでに決定しているのではなく、今この瞬間に、言論・政治空間において熾烈に闘われている段階なのである。ニューヨーク・タイムズ紙のように、実現してもいない未来を論拠に「日本の自動車メーカーが取り残された」と断定することはできず、トヨタや日産が業界のリーダーとして引き続き活躍する余地はあると思われる。
日本メーカーが得意とするハードではなく、ソフトで差別化を図る米国のEV シフトの「ディスラプトパワー」は、実は脆弱な側面が多い。EV 移行や環境目標達成が計画通りに進まない蓋然性は低くないため、日本の「しっかり計画してから実行」や「ものづくり」などアナログなレガシーシステムの価値が見直される局面が近未来にあると、筆者は見ている。
https://www.sbbit.jp/article/cont1/69129
米のEV推進は日本車つぶしか?「トヨタの不利」を報じまくるメディアたち
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