今回は、大衆音楽専門家で韓国ジョージ・メイソン大学の李奎卓(イ・ギュタク)教授に、K―POPが世界に飛躍した契機や根深い課題など、その光と影について書面で聞いた。
■教育ノウハウはジャニーズから
――J—POPと比べたK—POPの強みはどこにあるか。
K—POPはもともと、J—POPの影響を大きく受けている。特に育成制度などはジャニーズ事務所からのノウハウを取り入れたものだ。
ただ現在は、J―POP以上にダンスや歌唱力などパフォーマンスの高さを重要視するのが特徴となっている。このため芸能事務所では、練習生たちに対して体系的な教育を施している。
――日本と韓国でファンが求めるものが違うためか。
日本では、音楽的には未熟であったとしても親切で礼儀正しく、ファンとの交流を大切にするアイドルの人気が高い。ファンは彼らに高い音楽性を期待するよりも「成熟したスターへと成長していくプロセスを共有したい」という願望が強い。
■トータルマネジメントが奏効
――K—POPがビジネスモデルを転換する契機は何だったのか。
2000年代の初め、韓国で大きな人気を誇っていたアイドルたちに対して「音楽的に未熟だ」という批判の声が高まった。追い打ちをかけるように、所属する芸能事務所との契約が、アイドル側にとって一方的に不利な内容になっていることも社会的な問題として注目された。
韓国の芸能事務所は生き残りをかけて、より洗練された体系的な訓練をアイドルの卵たちに施し、彼らを完成した歌手としてデビューさせる「トータルマネジメント(total management)」戦略を取るようになった。アイドルの卵をデビューの企画段階から商品として完全に管理することで、アイドルの海外進出も可能になった。
■過酷な競争など社会問題に
――一方で「芸能事務所の訓練は過酷だ」という話も聞く。デビューまでこぎつけられるのはほんの一握りで、多くの若者は脱落し、その後もきちんとした仕事に就けないケースが多い。
行きすぎた過酷な競争とそれによる脱落者たちの問題は、音楽業界だけでなく韓国社会全般の問題だ。その点では日本も例外ではないと聞いている。何よりも、アイドル歌手たちの行動に対する過度な干渉が問題だろう。
https://www.nna.jp/news/show/2106407
【韓流新時代】K—POP専門家「JーPOPがヒントに」
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