- 石破茂首相が戦後80年の節目にあたり発出する先の大戦についての首相個人の「見解」の概要が9日、分かった。10日に記者会見を開いて公表する。政治が「軍」を統制する意義に焦点を当てる一方、歴史認識や戦争責任に関する言及は避ける。主戦論に傾いた戦前や戦中の時代背景を踏まえ、「偏狭なナショナリズム」や「無責任なポピュリズム」に警鐘を鳴らす。複数の政府関係者が明らかにした。 
 現行憲法下の関係にも触れ
 見解は「なぜ、あの戦争を止められなかったのか」という首相の問題意識のもと、戦前に政治が軍部を統制する「政軍関係」が確立されていなかった点を検証。軍を指揮・統率する「統帥権」が拡大解釈され、政府や政治家が「必敗」と予測された対米戦争に歯止めをかけられなかった実態を指摘する。当時の政府や軍部の縦割りも問題視する。
 また、過去の教訓を踏まえ、現行憲法下での自衛隊と政治の関係にも触れる。文民統制(シビリアンコントロール)をより確実なものにするため、自衛隊の最高指揮官である首相をはじめとする政治家の役割を強調する。一方、首相はこれまで自衛隊を他国同様の軍隊とみなすべきだとの持論を展開してきたが、軍隊を認めていない憲法9条の政府解釈などを考慮し、言及は控える。
 反軍演説やチャーチル演説も
 昭和12年の日中戦争勃発以降に軍部やメディアなどが扇動した主戦論を問題視し、異論に不寛容になっていた当時の社会情勢についても考察する。泥沼化する日中戦争継続に異議を唱えた衆院議員、斎藤隆夫氏の15年の帝国議会での「反軍演説」に触れる。民主主義の欠陥を認めながら最善の民主政治を求めたチャーチル英首相の「民主主義は最悪の政治形態といえる。他に試みられたあらゆる政治形態を除けば」という議会演説の一節も引用する。
 首相は9月の国連総会の一般討論演説でも「無責任なポピュリズム」や「偏狭なナショナリズム」を批判し、民主主義の土台として「健全な言論空間」の必要性を訴えた。
 ただ、退陣する首相による見解発出には自民党内の反発が大きく、見送りを求める声もある。高市早苗党総裁は総裁選期間中だった9月25日の産経新聞の取材に「70年談話がベストだ。新しいメッセージは必要ない」と述べ、反対している。
石破首相の戦後80年「見解」政治と軍の関係に焦点 10日発表、無責任なポピュリズムに警鐘
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