アメリカの「国家防衛戦略(NDS)」は、歴代政権が防衛・外交の基本方針を定め、各会計年度の国防予算編成を方向づける中核文書である。トランプ政権は近く第2期の新版NDSを公表する予定で、ヘセス国防長官が最終案を取りまとめている。2018年版と比べ、今回の戦略は「アメリカ第一」および「力による平和」の理念を継承するとともに、「中国による台湾の武力奪取を抑止する」ことを中核目標として一層明確に位置づけている。
なぜアメリカの新たな防衛戦略は特に台湾に焦点を当てるのか?
米国防総省の政策顧問を務めた経歴を持ち、現在は米海軍研究協会の上級研究員である吉原俊井氏は、産経新聞のインタビューで、新版NDSが台湾の安全を最優先課題として位置づけていると明らかにした。吉原氏は、中国が台湾への上陸作戦や大規模な軍事行動に踏み切った場合、米軍は「その目的達成を阻止する」ために直接介入すると強調した。これは従来の「戦略的曖昧さ」とは異なり、トランプ政権第2期の対中姿勢の転換を示すものである。
アメリカの対台「戦略的曖昧さ」は「戦略的明確化」に向かうのか?
アメリカの「台湾関係法」は、台湾有事の際に米軍が出動するか否かを明確に規定しておらず、歴代政権も曖昧戦略を維持してきた。ところが、新版の国家防衛戦略(NDS)は「米軍の介入」を想定シナリオに組み込み、北京が軍事的圧力を行使した場合、ワシントンは兵力配備を強化するのみならず、人民解放軍の台湾制圧を阻止するため直接行動に踏み切ることを示唆した。これはトランプ政権第2期の対中政策における重大な方針転換と受け止められている。
台湾自身の防衛能力がなぜ国際的な焦点となっているのか?
吉原氏は、トランプ政権が台湾の現段階の防衛準備に満足していないと指摘し、このため新版NDSに「台湾の自助防衛の一層強化」を求める期待を盛り込んだと述べた。解放軍の対台戦略は正面作戦に限られず、「海上封鎖」や「政治・軍事の浸透」などで台湾を弱体化させる可能性があると警告した。アメリカ側はこれに対応し、地域防衛網の強化、台湾の強靱性(レジリエンス)構築の支援、同盟国に対するより直接的な軍事協力の要請といった対処策を計画している、という。「同意できないなら出て行け」ヘグセス長官が大規模会議で演説 米国防総省の多様性政策を痛烈批判
米国のピート・ヘグセス国防長官はバージニア州で数百人の高級将校を前に演説し、国防総省の一連の改革を発表した。近年のいわゆる「覚醒( woke )政策」を「愚かだ」と断じて転換し、兵士の体力基準を引き上げると明言。方針に賛同できない者は軍を去るべきだと、将校らに率直に告げた。
ヘグセス氏は、米軍は長年にわたり「愚かで軽率な政治家」に振り回され、誤ったテーマにリソースを費やしてきたと批判。「本日の要点は、数十年来の歪みを正すことだ。目に見えるものもあれば、まだ見えないものもある」と述べた。
剃毛規定と体力基準を原点回帰
各軍種で緩められていたひげや身だしなみの規定、体力基準を復活。特に戦闘職種(combat MOS)・戦闘兵科については「最も厳しい男性基準」へ戻すと表明した。
ヘグセス氏は「息子が体力不足の隊員と肩を並べて任務に就くこと、男性と同一の戦闘基準を満たせない女性が戦闘部隊にいること、武器や任務に不案内な兵士と戦うことは望まない」と強調した。
演説では、国防総省が進めてきた多様性推進(DEI)、トランスジェンダー関連対応、「覚醒」文化を痛烈に批判。政権発足当初から「政治的正しさ」と「有害なイデオロギー」の排除に取り組んできたとし、今後は“アイデンティティ月間”、DEIオフィス、男性のスカート着用といった取り組みは行わないと明言した。
「気候変動教、分断、混乱、性別幻想も不要だ。軍に無駄は要らない」と言い切った。
さらに、方針に反発する将校に対しては「今日の話を聞いて心が重くなったのなら、名誉ある選択を——辞職を」と退任を促した。
単なる意見の相違にとどまらず、過去の文化に染まり「愚かで軽率な政治指導者」に導かれてきた者は軍を去るべきだとし、「真に戦士であろうとする者だけが残れ」と突き放した。
異例の大規模会議でトップが相次ぎ登壇
この大規模な会議では、ヘグセス長官に続き、ダン・ケイン統合参謀本部議長やドナルド・トランプ大統領も演説。会場には現役の高級将校が多数出席し、海外から急きょ帰国して臨んだ者も少なくなかったという。
「台湾有事はアメリカ有事」 新国防戦略、台湾防衛を表明―
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