防衛省が反撃能力として行使できる米国製巡航ミサイル「トマホーク」を最初に搭載する海上自衛隊のイージス艦「ちょうかい」(長崎県・佐世保基地)について、来夏までに米国でトマホークの実射試験を行う方針を固めたことが13日、日米関係者への取材で分かった。試験は米の有償軍事援助(FMS)によるもので、費用は20億円以上になる見込み。
成功すれば、湾岸戦争など数々の戦場で使用された巡航ミサイルを用いて、他国の領域を直接攻撃できる能力を自衛隊も得ることになる。
集団的自衛権行使を限定的に容認した安全保障関連法成立から19日で10年。米国への攻撃で日本の存立が脅かされる「存立危機事態」など同自衛権行使の要件を満たせば、米国からトマホーク発射を要請される局面もあり得る。専守防衛は一段と形骸化する。
ちょうかいはトマホーク発射機能を付加する改修を2026年3月までに完了。試験では地上の攻撃目標への精密誘導システムが作動するか検証するとみられる。防衛省は「任務に適合する能力を発揮できるか確認する。試験を支援する米国との関係もあり、詳細は答えられない」としている。
海上自衛隊のイージス艦「ちょうかい」=1月20日、長崎県の佐世保基地
米海軍によると、トマホークは射程約1600キロ。日本周辺から発射すれば中国、北朝鮮、ロシアが射程に入る。今年6月のイラン核施設攻撃にも使用された。
トマホークは飛行経路の地形の起伏や攻撃目標の建物の特徴などの情報が入力され、発射後はそのデータと照合しながら飛行。途中で目標を変更することも可能とされる。
このため運用には他国領土の偵察・情報収集が必要になり、米軍の支援が欠かせない。日米両政府は「偵察・ターゲティング(目標選定)」などの協力を重視することで一致しているが、圧倒的な情報量を持つ米軍戦闘システムに依存し、米側の指揮統制下に入る懸念もある。
防衛省は反撃能力の運用に関し「日米は緊密に連携するが、自衛隊と米軍はそれぞれ独立した指揮系統に従って行動する」としている。
海自はイージス艦8隻全てにトマホークを搭載する。「ちょうかい」に続き「きりしま」(神奈川県・横須賀基地)と「はぐろ」(長崎県・佐世保基地)の改修も予算化。26年度予算概算要求には「みょうこう」(京都府・舞鶴基地)と「あたご」(同)の改修費が計上された。
トマホーク実射試験へ 米国で攻撃能力確認―海自イージス・防衛省
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