米軍は太平洋戦争末期、日本の戦争の意志を完全にくじくために、民間人の密集地域まで焼き尽くす空襲をおこなった。家族を連れて逃げようとしたファンさんは、「火災で火の粉が飛び散り、煙が立ちのぼっていて前が見えず、息もまともにできなかった。落ち着いてから何日も妻を探しまわったが、遺体すら確認できなかった」と言って身を震わせた。ファンさんはこの時、妊娠3カ月の妻と義妹を失った。
在日朝鮮人たちは火の海の中で、その20年あまり前に経験した関東大震災時の朝鮮人大虐殺が再演されるのではないかという「二重の恐怖」に震えなければならなかった。当時10歳だったイ・ギソクさんは「あの時、父が母に『(朝鮮語で)一言も話すな』と言った」と証言する。東京大空襲での死者数は9万5千人あまりで、うち朝鮮人の死者は1万人あまりに達すると推定される。
今月5日に記者が訪ねた東京都江東区の「東京大空襲・戦災資料センター(東京大空襲センター)」には、この時犠牲になった朝鮮人のコーナーが設けられ、ファンさんのようなつらい体験談を記録している。東京大空襲センターは「空襲の被害を受けた朝鮮人たちは、植民地支配下で日本に渡ってきて生きていこうとしていた人々だけでなく、軍需工場などに強制動員された人々もいた」と説明している。
東京大空襲から今年で80年になるが、数多くの朝鮮人犠牲者がいるにもかかわらず、韓日政府レベルのきちんとした真相究明は行われていない。韓国政府では、2012年に「対日抗争期の強制動員被害調査および国外強制動員犠牲者等支援委員会(強制動員支援委員会)」が強制動員被害を調査した際、東京大空襲における95人の朝鮮人の死亡を確認している。強制動員支援委員会は、東京都墨田区の東京都慰霊堂で開かれる東京大空襲の朝鮮人犠牲者追悼式に2015年まで追悼の辞を送っていたが、その後は組織が解体されたことで、それすら途絶えている。
https://www.hani.co.kr/arti/international/international_general/1186123.html
「東京大空襲」1万人あまりの朝鮮人犠牲者…「政府レベルで真相究明を」
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