私の両親は小学生の時に離婚し、父とは離れて暮らしていました。父が亡くなった中学生の時、父の戸籍を確認する機会がありました。その時初めて、父が在日コリアン2世であることを知りました。
TV番組のコメンテーターとして父が在日であることに触れると、ツイッターで「朝鮮人は番組に出るな」と私に直接言ってくる人がいます。東京の新大久保でヘイトスピーチ(差別扇動表現)を行う団体によるデモを目の当たりにしたこともあります。
「死ね、ころす、ゴキブリ朝鮮人」などと言われると恐怖を感じますし、父が否定されたような気持ちになります。
世の中に広がるヘイトスピーチに対して反対の声を上げていくことは大事なことですが、その一方で他者を攻撃する人は生きづらさを抱えているのではないかと受け止めています。 精神的にも経済的にもゆとりがあれば、他者を無為に攻撃する必要性がそもそもなくなると考えるからです。
私がヘイトスピーチに対して憎しみだけに流されないのは、迫害されているにもかかわらず憎悪の連鎖を止めたいと考える人たちに中東で出会ったからです。 イスラムへの差別発言を重ねたトランプ米大統領に私も怒りを覚えましたが、イラク人の友人アリさんの受け止め方にはっとさせられました。
「差別発言は容認しないが、大統領を憎むことはしない。イスラム教徒(ムスリム)は自分を誹謗(ひぼう)中傷する人さえも受け入れ、相手に誹謗中傷は返さない。争いはそれで終わる」
憎悪への一つの向き合い方だと思います。
やすだ・なつき フォトジャーナリスト。海外取材のほか、東日本大震災以降は津波で義母が亡くなった岩手県陸前高田市を中心に被災地の取材も続けている。2012年、「HIVと共に生まれる ウガンダのエイズ孤児たち」で第8回名取洋之助写真賞受賞。
著書に「写真で伝える仕事 世界の子どもたちと向き合って」(日本写真企画)、「君とまた、あの場所へ シリア難民の明日」(新潮社)、「それでも、海へ 陸前高田に生きる」(ポプラ社)など。
http://www.kanaloco.jp/article/271000
【安田菜津紀】「朝鮮人は番組に出るな」「ゴキブリ朝鮮人」などと言われると恐怖を感じる
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