[ハノイ 14日 ロイター] - ベトナムの首都ハノイで9月に開かれた大規模な軍事パレードでは、ベトナム人の若い女性数十人が「かっこいい」部隊の行進を一目見ようと何時間も列に並んだ。だが、お目当てはベトナム軍ではなく中国軍の部隊だった。
この光景は、対米貿易摩擦が起きる中、ベトナム市民の間で中国への態度に変化が起きていることを示している。市民感情の変化を受けて、ベトナム政府は中国に近い地域で高速鉄道建設や経済特区の設立など、センシティブなプロジェクトを推進できるようになった。こうした取り組みによって両国の関係は一層強まりそうだ。
ベトナムではわずか数年前まで、過去に何度も戦争となった強大な隣国・中国に対して警戒心を抱く人が多く、こうしたプロジェクトは物議を醸し、激しい抗議行動が起きることもあった。
だがソーシャルメディアの投稿、オンライン検索、言語学習データなどを見ると、中国に対する見方が徐々に和らいでいることが読み取れる。
シンガポールのシンクタンク「ISEAS─ユソフ・イシャク研究所」が今年初めに実施した調査によると、ベトナム人回答者の約75%が中国よりも米国を好ましいパートナーと考えていたが、中国を好む割合の上昇幅は東南アジア諸国で最も大きく、地域全体の流れに逆行していた。
ソーシャルメディアはベトナムのこうした世論の変化で重要な役割を果たしているようだ。中でも若者に人気が高い中国発動画共有アプリTikTok(ティックトック)は特に影響力が強く、政府によると昨年は国内ユーザー数が6700万人と、フェイスブックに次ぐ規模に達した。
ティックトックでベトナム語の「中国」を検索すると、ポジティブな結果が圧倒的に多く表示され、2023年までさかのぼる投稿も多い。人気が高いのは中国兵士が一糸乱れぬダンスを披露する動画や、中国の都市の発展を紹介する映像などで、多くの閲覧者が中国の急速な発展に称賛を送っている。
さらには、「南シナ海」に相当するベトナム語を検索すると、両国が領有権を争う海域であるにもかかわらず、熱帯性低気圧のニュースや、ベトナムと同じくこの海域の一部に領有権を主張するフィリピンと中国の緊張を取り上げた動画が多く表示されるという。これは、アルゴリズムの偏りを避けるためにユーザープロファイルを設定せずに行ったテストで確認された。
ベトナムで対中感情が軟化、SNSの影響強く 「脅威」から「かっこいい」へ
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