江戸時代以前〜和算・数学系
1. 和算(わさん)=関孝和(1642?–1708)や建部賢弘らが中心。独自に「代数学」「微積分的手法」「行列式的考え方(円理)」などを生み出した。西欧の解析学とは別に問題を「算額(神社に奉納された数学絵馬)」として競い合う文化あり。関数や極値の考え方、連立方程式の解法も。
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自然科学・技術系
2. 本草学(ほんぞうがく)=中国の本草学を基礎に、日本独自の植物・鉱物・動物を体系化。貝原益軒『大和本草』(1709)は西洋博物学とは独立に日本の自然を整理。実験的観察を重んじ、西欧科学に近い「経験科学」として成熟。
3. 鉱山・冶金技術=たたら製鉄法:砂鉄を使い高温還元を行う日本独自の製鉄技術。銅精錬法・灰吹法なども独自発展し、江戸期の日本は世界屈指の金銀生産国。
4. 測量・天文学=伊能忠敬の測量術(18–19世紀)は、ヨーロッパ式器具の導入前から和算・自作器具で実現。高橋至時・間重富らの天文暦学も、西洋天文学導入前に独自発展。
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工学・技術文化系
5. 和時計(和時計・不定時法時計)=江戸時代の日本では昼夜の長さが季節で変わる「不定時法」。それに合わせて歯車比を自動調整する「和時計」が発明された。例えば田中久重「万年時計」(1851)は機械式計算機並みの精巧さ。西洋時計の単純な模倣ではなく、日本独自の時間文化に適合。
6. からくり人形=機械仕掛けの自動人形。純機械式でプログラム的動作(カム制御)を実現しており、ロボット工学の原型とされる。
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芸術・工芸・思想系
7. 日本刀の鍛錬技術=西欧剣とは異なる「折り返し鍛錬」「焼き入れ・焼き戻し」により、硬さと靭性を両立。材料工学的に非常に高度な「複合材料設計」。
8. 漆工芸(うるし)=天然樹脂を使った塗装・接着技術。化学的耐久性が高く、現代でも人工的に完全再現が難しい。蒔絵などは装飾美術と化学技術の融合。
9. 紙・印刷・染色技術
和紙は植物繊維を利用した極めて長寿命の紙。型染・藍染・友禅などは物理化学的に独自の染料固定法を発展させた。
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近代以降の独自発展の延長線
•津田左右吉・本居宣長などの文献学:比較言語学とは独立に精緻な古典分析を発展。南方熊楠の生物学的思索:西欧科学と独立した生態系思想。江戸期の「複合的技術文化」が、後の明治工業化の土台になった。
明治以前の日本の科学技術
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