もしNetflixにある膨大な映画やドラマのライブラリ全体を、わずか1秒でダウンロードできたとしたら…。あくまでバックボーン(幹線通信)の話ではあるが、このことに匹敵する驚異的な長距離データ伝送を日本の研究者たちが現実にした──。
日本の情報通信研究機構(NICT)の研究チームは、1808kmという長距離区間において、毎秒1.02P(ペタ)ビットという驚異的なデータ伝送速度を1本の光ファイバーケーブルで実現した。これは伝送容量と距離の世界記録を大幅に塗り替えるものとなる。
従来の長距離伝送と容量の世界記録(伝送容量exabit / 時間s x 距離km)は1.71だった。今回の実験では1.86を達成し、記録を塗り替えた。(更新:数値の誤りを訂正しました)
NICTは報告書のなかで、「今回の成果は、データ通信量が世界的に爆発的に増え続けるなか、将来の大容量でスケーラブルなネットワーク構築に向けた重要な一歩である」と強調する。
その鍵となるのが、既存のインフラとの高い互換性だ。今回使用された光ファイバーケーブルは、現在世界中で広く使われているものと同じ直径(0.125mm)のケーブルに、19本ものコア(光路)を詰め込んだ「19コア光ファイバー」だ。
この19コアファイバーは、従来の長距離用光ファイバー1本が1つの光路しか持てなかったところに、なんと19個の光路を設けている。つまり、1本で19本分に相当するわけだ。
こうした速度向上は、今後そう遠くない将来に実際に求められる可能性がある。
通信業界では「ニールセンの法則」と呼ばれる経験則があり、ハイエンドユーザーの回線速度はおおよそ年率50%のペースで向上するとされている。近年、この伸びは鈍化傾向にはあるが、一般的な高速通信とされる1Gbps回線であっても、10年後には10Gbps以上が当たり前という時代が訪れるかもしれない。
また、AIの普及によって情報通信へのニーズがさらに高まる中、こうした需要の高まりに対応するには、データセンター間や国際間をつなぐ幹線ネットワーク側のインフラも、それに見合った高容量・高効率化が求められる。今回の伝送実験で示された技術は、まさにそうした未来に備える中核技術となり得る。
Netflix全作を1秒で? 日本勢が「長距離データ伝送」の世界記録を更新
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