石破首相と欧州連合(EU)首脳が月内に会談してまとめる共同声明の原案が14日、判明した。日欧による「競争力アライアンス(連合)」を発足させ、「経済的威圧」が懸念される中国や米国による関税措置を念頭に、国際的な経済秩序の主導を図る。経済安全保障や貿易、防衛産業などの多分野で日欧の協力関係を格上げする。
会談は、フォンデアライエン欧州委員長とコスタ欧州理事会常任議長(EU大統領)が来日し、23日にも東京で行われる。会談後に共同声明や競争力連合に関する付属文書などを発表する予定だ。
共同声明の原案では、日本とEUが法の支配や自由貿易などの「価値観と原則を固く共有している」と強調した上で、「(協力の)重要性がかつてなく高まっている」との認識を示した。
中国はレアアース(希土類)の輸出規制など貿易管理を強め、トランプ米政権は高関税を日本やEUに通告している。日欧は、米中の名指しは避けつつ、「安定的で予測可能、ルールに基づく自由で公正な経済秩序の維持・強化」に貢献する決意をアピールする。
日本としては、8月1日の交渉期限までの妥結を目指して米国との関税交渉を着実に進める一方、長期的な国際経済秩序の安定化に向け、EUとの協調で多国間連携にも同時に取り組む姿勢を鮮明にする。
日欧の具体的な協力では、貿易と経済安全保障分野が柱となる。世界貿易機関(WTO)を中核とする自由貿易体制の維持を目指し、WTOやG7(先進7か国)などの多国間協議の場で、日欧が意見調整を共同でリードすることを確認する。
日欧が協力して戦略物資のサプライチェーン(供給網)監視に取り組み、レアアースなどの重要原材料と電池の供給網強化を進める。エネルギー安全保障強化のため、液化天然ガス(LNG)などの供給安定に向けた投資も支援する。
先端技術の活用推進に向け、防衛産業に関する対話を新設するほか、多数の小型衛星を連携させる「衛星コンステレーション」の開発加速も盛り込んだ。
日欧は、2019年発効の日EU経済連携協定(EPA)や今年1月に正式発効した日EU戦略的パートナーシップ協定で協力関係を深めてきた。今回の競争力連合は、これらを基礎に世界経済の実情を踏まえ、日欧の戦略的な競争力をさらに強化する狙いがある。
日本とEUで経済秩序主導へ…米中を念頭、自由貿易や供給網の「連合」発足へ
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