【パリ=三井美奈】ドイツ、フランス、スペインの3カ国による「将来戦闘航空システム」(FCAS)開発計画が破綻(はたん)の危機に直面している。欧州メディアが17日までに報じた。FCASは第6世代戦闘機導入を目指し、「米国依存からの脱却」を目指す欧州独自安全保障の象徴だったが、独仏両国間で戦略のずれが鮮明になっている。
システム協力に縮小か
FCASは、2017年に独仏両国が合意を発表した。開発総額は推計1000億ユーロ(約18兆円)。ステルス戦闘機が支援ドローンと編隊を組んで「電子戦」に対応可能なシステムを構築する計画で、40年の運用開始を目指してきた。
英紙フィナンシャル・タイムズ(電子版)は16日、独仏両政府が戦闘機製造を見送り、共同開発の対象を司令システムに縮小する方針で交渉中だと報じた。
共同開発については来年初め、試験飛行に向けた第2段階に入る予定だが、対立長期化で準備が遅れている。計画には、仏航空大手ダッソーや欧州航空大手エアバスが参加する。
ドイツはフランスが開発の主導権を取ろうとすることへの不満があり、9月には英国やスウェーデンとの協力を探っているとの報道が出た。すると、ダッソーのトラピエ最高経営責任者(CEO)は「望むなら、われわれだけで開発できる」と述べて「ドイツ抜き」計画に意欲を見せ、対立が浮き彫りになった。ダッソーはフランスでミラージュ、ラファールという主力戦闘機を単独で建造し、輸出してきた実績がある。
10月になって、ピストリウス独国防相は「どんな中身であれ、今年内の決断が必要」と訴えた。フランスと合意できない場合、共同開発からの離脱も辞さない立場を示唆した。
ウクライナ侵略で溝
独仏の対立は22年、ロシアがウクライナ侵略を開始したのを機に顕在化した。
ドイツは同年、米国の第5世代戦闘機F35の購入を決定した。ロシアの脅威が高まり、米国との関係重視に傾いた。ドイツは北大西洋条約機構(NATO)の「核共有」の枠組みで国内にある米核兵器の運搬機を必要としており、当初はフランスと共同開発する戦闘機の使用を視野に入れていた。F35が運搬機として使えるようになり、次世代戦闘機の開発を急ぐ必要がなくなった。
独仏「次世代戦闘機」崖っぷち 対立埋まらず計画大幅縮小か 日英伊3国開発のライバル
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