電気自動車(EV)需要も伸び悩み、中国の比亜迪(BYD)などとの競争は一段と激しくなっている。欧州域内に多数の工場を持つメーカー各社にとって、雇用や稼働率をどう維持するかが喫緊の課題だ。
2025年9月8日に開幕した「IAA Mobility 2025(ミュンヘン・モーターショー)」では、欧州や中国の自動車メーカーが新型EVを発表し、注目を集めた(9月14日閉幕)。しかし例年以上に強調されたのは、欧州自動車産業に大きな転換点が訪れているという事実だった。
ショー期間中、フォルクスワーゲン(VW)、メルセデスベンツ、ステランティスの経営陣は、2035年までにエンジン車の新車販売を段階的に禁じる欧州連合(EU)の方針に強い反発を示した。
こうした状況を受け、9月12日には欧州委員会のフォンデアライエン委員長と自動車産業幹部による会合が、ベルギー・ブリュッセルのEU本部で開かれた。その結果、エンジン車販売禁止措置の見直し時期は前倒しされ、当初の2026年から2025年末に繰り上げられる見通しとなった。
ブルームバーグによると、VWのオリバー・ブルーメCEOは
「2035年までにEV100%にするのは非現実的だ。現実的な見直しを強く主張する」
と記者団に語った。メルセデスベンツのオラ・カレニウスCEOも「今こそ政策立案において何が機能し、何が調整を要するかを見直すときだ。何もしないという選択肢は、あり得ないと確信している」と強調した。
一方で、ボルボのハカン・サミュエルソンCEOはEUの措置に賛同を示した。ボルボは2030年までの完全EV化を撤回し、プラグインハイブリッド車とEVの販売比率を90%以上に修正した。2025年1~8月のEV販売は前年から24%減少し、苦戦が続いている。EVシフトを進めるメーカーにとって、EUの措置は販売を後押しする要因となる。欧州メーカー間で足並みの乱れが表面化した格好だ。
ドイツのメルツ首相も自動車産業の重要性を強調する。9月9日にIAA2025会場で演説し
「われわれはもちろん、EVへの移行に取り組んでいる。しかし、規制にはより柔軟性が必要だ」
と訴えた。自動車産業は数百万人の雇用を支え、欧州経済の中核を担う。広範なサプライチェーンを抱えるだけに、EUの措置は産業全体に劇的な影響を及ぼしかねない。
「EV100%は非現実的」フォルクスワーゲンCEOが断言─
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