南西地域防衛強化へ地理を勘案 25年度から配備
防衛省は29日、初の国産長射程ミサイル「12式地対艦誘導弾能力向上型」を陸上自衛隊健軍駐屯地(熊本市東区)に2025年度から配備すると発表した。地上の発射機から撃ち出す「地発型」で、国内配備は初めて。射程圏内の半径約千キロには中国沿岸部や北朝鮮が入り、他国領域のミサイル基地などを破壊する反撃能力(敵基地攻撃能力)を保有することになる。
26年度にかけて段階的に配備する計画で、防衛省は26年度政府予算の概算要求に整備費1798億円を盛り込んだ。24年10月に第1次発射試験を実施しており、今年10月から米国で第2次試験に臨む。
12式能力向上型は、千キロ程度の飛翔[ひしょう]が可能。健軍駐屯地を拠点とする第5地対艦ミサイル連隊が運用を担う。防衛省は「ミサイルをメンテナンスする基盤が整っていることに加え、南西地域の防衛力を強化するため、地理的な位置関係も勘案して健軍に決めた」と説明している。
健軍駐屯地への配備は、南西諸島周辺で軍事的圧力を強める中国をけん制する狙い。ただ、発射機は車両型で移動が可能で、防衛省は発射場所を含めて12式能力向上型の運用の詳細を明らかにしていない。相手国から標的にされるリスクが高まるとの懸念や専守防衛の理念に反すると指摘する声も出ている。
防衛省は27年度に12式能力向上型を富士駐屯地(静岡県)の特科教導隊にも配備する予定。長射程ミサイル「島しょ防衛用高速滑空弾」の開発も進め、九州では26年度にえびの駐屯地(宮崎県)に新設する部隊に配備する。
防衛省として過去最大となる総額8兆8454億円の概算要求では、全国の主要司令部を地下に移す「地下化」に364億円を計上した。西部方面隊が総監部を置く健軍駐屯地では25年度に着工し、27年度末の完成を予定している。
地下化は22年に閣議決定した防衛力整備計画に基づく。中国や北朝鮮を念頭に自衛隊施設が敵の攻撃を受ける事態に備え、主要司令部の機能を守る狙い。
長射程ミサイル、熊本市・健軍駐屯地配備へ 防衛省発表
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